高田純次さんが出演しているNHK教育の「世界の哲学者に人生相談」が好きでよく観ます。
視聴者から寄せられたお悩みに対して、哲学者の「お考え」をもとに解決していこうという番組です。
番組にはいろんな悩みが寄せられますが、哲学はいつもその悩みに対して、視野を拡げてくれる考えを提供します。
これを観て、哲学ってすごいな。。と思いました。
ただ単純に概念上のものを考える実体のない学問かと思っていましたが、もっと人間に寄り添った実学的な側面もあるんだなと思いましたので、早速買いました。
めちゃくちゃ面白いです。
この記事では、この本について書評していきたいと思います。
著者
ウィル・バッキンガムほか
この本の目的
哲学への入門書
哲学とは何か
この本では、哲学をこのように定義しています。
慣習的な見解や伝統的な権威を鵜呑みにせず、推論を駆使して自ら答えを見つけ出そうと試みる過程
この本の特徴
本書は、現在までの哲学者がたどり着いた思想の中でも、カントの「我思うゆえに我あり」といった、よく知られた引用句や簡潔なまとめといった形に要約されています。
図鑑によくありがちな情報の羅列といった冗長なものではなく、著者がそれぞれの哲学者の核と考えるテーマ一つに絞って、徹底的にそれについて図解を交えながら論じるという構成になっています。
この点がまさに、哲学という難しいテーマ+「図鑑」の味気なさを払拭した、画期的な本になっている所以であると言えます。
例えば、カントのページなどは次のようにまとめられています。
その哲学者の考えを端的に著した一文があり、
図解とともにそのような考えに至った過程が記されています。
哲学者の名言集などの本が流行っていたりしますが、僕がどこか表面的で心に突き刺さらない感覚を持っていました。
この本は、その哲学者が生きた時代背景から、なぜそのような考えになったのかなどの過程をじっくりと知ることができるので、名言的に端的に表された句も自分の中で消化され、心に滲み入るようになります。
僕が好きな哲学者
当然僕は、図鑑の中身を全て熟読したわけではありません。
ですが、読んでいてこの考え方は本当に好きだなと思った哲学者を1人紹介させていただきます。
フランスの哲学者 ジャン=ポール・サルトル です。
トップページには「実存は本質に先立つ」と有名な句が紹介されています。
サルトルは、「人間であるとはどう言うことか」を探求しています。
古来からの哲学者は、人間であるとはどう言うことであるかを示す本質は何かという問いを追い求めていました。
しかし、サルトルは、そのように考えると、人間の最も重要な点である「自由」を逃してしまうことになるのだと指摘します。
ペーパーナイフと人間は違うということです。
ペーパーナイフには「紙を切る」という本質があります。
しかし、人間は何かある特定の目的のために作られたものではない!と主張します。
何よりもまず、人間は実存し、不意に出現し、舞台に現れ、その後になってようやく自分を定義する。
ジャン=ポール・サルトル
私たちは、自分が選んだものになっていくことができる存在だということです。
自分で自由に選択ができるのだと。
そして、サルトルはこうもいいます。
人間は自由であると言う刑に処せられている
ジャン=ポール・サルトル
ここからは本書をちょっと引用いたします。
もし哲学者になる決断をしたなら、そう自分で決めたというだけでなく、哲学者になるのが意義ある活動だと自分が考えているということをも暗に主張しているわけだ。
これはつまり自由が、実は万人に対して最大の責任を負うことでもあるということだ。
私たちは、自分の決断が自分にもたらすインパクトについて責任を持つばかりでなく、それが人類全体に対してもつインパクトについても責任を負うのだ。
そして、自分の行動を正当化するいかなる外的な原理も規則もないのだから、自分の行う選択から逃げることを許してくれるどんな言い訳もありえない。
私はこの考え方を見て、すごくすんなりと心に入ってきました。また、ほっとしたと同時に、緊張感も生まれました。
自分の人生は自分で作っていけるんだと思えた安心感と
だからこそ、自分が選んだ行動(仕事が一番大きいです)は、大きな責任が伴うんだ、という緊張感です。
でも、運命のようなものに出会ったときに何か悲観的になってしまっていた僕にとっては非常に救いでした。
まとめ
いかがだったでしょうか。
哲学は、過去の先人たちが英知を結集して気付き上げてきた知の集積です。
今あなたが感じている悩みも、きっとこの図鑑の中の誰かがその相談に乗ってくれるはずです。
悩みを抱えていなくても、この巨大な知の集積に触れて、自分の視野を広げるのも良いかもしれません。
もし、興味がありましたら本書を手に取ってみてください。
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